スウィートブレッドで全米制覇。
キングスハワイアン創業一族 (その2)


 

アロハスピリットと家族の団結

同社の成功の秘訣として商品力がトップ要因だったことは間違いないが、もう一つの要因として「アロハスピリット」も挙げられる。
社屋にはスウィートブレッドの甘い香りが漂っている。人々もまたハワイ的な柔らかで優しい笑顔に溢れている。その雰囲気は、同社が経営しているレストランで触れることができる。

トーランス市内のキングスハワイアン・レストランの経営者は、マークさんの妹、ステラ・ミヤムラさん。「父がロサンゼルスに来た時、誰もうちの商品を知らない中で、沖縄出身の人たちが本当によくサポートしてくれました」とステラさん。中でもタイラ一家にとっての恩人とも言える存在が、ホンダ・アメリカの特別顧問であるウィリー・トキシさんだ。

*創業者とマークさんの肖像画(写真左)
*キングスハワイアンレストランでのステラさんと一家の恩人ウィリーさん

ウィリーさんが自分の知り合いを紹介したり、ブレッドを口コミで広めてくれたりしたことは「当時の私たちにとってはとても特別なことだったのです」とステラさんもマークさんも感謝の言葉を今も口にする。それに対して、「成功したら昔の恩を忘れてしまう人は少なくないでしょう?でも、彼らには、いつまでも感謝の気持ちを忘れない温かい心があるんです」と、ウィリーさんもまた温かい笑顔でそう話してくれた。

カリスマ創業者を継ぐ2代目

実はマークさんに会う前、「父親が成功した会社をそのまま引き継ぐことに抵抗はなかったのか。他にやりたいことはなかったのだろうか」という素朴な疑問が筆者の中には浮かんでいた。その質問を最初にマークさんに向けると、彼は即座にこう答えた。

「子供の頃からベーカリーという環境の中で育ってきたのです。学校に通いながらでも手伝っていたし、卒業したら当然のように家業に携わるという気持ちがありました」

「では、あなたのお父様はどんなビジネスマンだったのですか?」という問いを向けると、「彼は何物も恐れることはありませんでした。成功に留まっているタイプの人ではなかったのです。事業が軌道に乗ってもそこで満足せずに、次はいかに大量に効率的に生産できるかという新たな課題に取り組み始めるという具合でした」
とマークさんは答えた。

その答えには、カリスマ創業者への深い尊敬の念が感じ取られた。実際にロバート・タイラは、ハワイの商売をアメリカ本土に持ち込んで成功したビジネスマンの草分け的存在なのである。

しかし、残念なことに、現在の新工場の完成の前年の2003年、彼は79歳の生涯を閉じた。そして、今、マークさんのオフィスには、笑顔のタイラ父子の肖像画が飾られている。息子の腕にはしっかりとスウィートブレッドが抱えられている。
(取材時期 2011年)

掲載された『Discover Nikkei』の記事は以下のURLからご覧ください。
http://www.discovernikkei.org/ja/journal/2011/9/13/kings-hawaiian/

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