故郷への思い詰まったグルテンフリー・ベイカリー
『Kirari West』

2011年3月の東日本大震災は北関東から東北にかけて甚大な被害をもたらした。今もまだ復興は途上にある。ロサンゼルス郊外の海辺の町、レドンドビーチのベイカリー、Kirari Westのオーナー、斎藤ヒロさんの実家も被災地、福島市にある。実家はもともと呉服屋だったが、父親が呉服屋以外にも建設会社を起こし、さらに福島の米から作られた米粉製のバウムクーヘンの店もオープン、多角経営に手腕を発揮していた。

斎藤さんは福島市内の高校を卒業後、1996年にアメリカ東海岸のデルウェア州に語学留学。その後、日本には戻らずニューヨークでレストラン業界に飛び込んだ。さらにロサンゼルスでは、グルテンフリーのメニューの先駆者的存在だったスタジオシティのヒューゴズ・レストランで、50人の従業員を統括するマネージャーとして責任ある仕事を任された。そしてヒューゴズで勤務して8年目を迎えた時に、あの大震災が起こった。

「何日間も家族との音信が途絶え、私は不安にかられました。人間、そういう時は最悪のシナリオを想像してしまうものです」

…………中略

福島にある樹楽里の西海岸版であるKirari Westは、おしゃれな高天井の居心地の良い空間に誕生した。店のメニューはオープンして2年の間に顧客の要望を取り入れつつ、パニーニのサンドイッチやガレット、サラダなどの軽食を増やしてきた。ドリンク類もコーヒー各種はもちろん日本茶も揃う。

「実はオープン半年間は宣伝に使う予算がなく、ネガティブスパイラルにハマり、赤字から脱出するのに苦労しました。しかし、ヒューゴズでの経験を通じて得た、『しっかりした商品とサービスを提供していれば、顧客は必ず帰ってくる』といった信念に基づいて経営を続け、口コミサイトのYelpで火がつきました」

斎藤さんの話を聞いた後、人気商品のアーモンドブリオッシュをいただいた。しっとりした生地に甘さと優しさが感じられた。その優しさは斎藤さんの故郷を思う気持ちなのかもしれない、と思った。
(取材時期 2017年6月)


 


Kirari West
707 N. Pacific Coast Hwy, Redondo Beach CA
(310)376-5313
www.kirariwest.com

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